『たまこまーけっと』と加茂川マコト、どうなる?出町商店街
- 2013/01/23
- 22:27

出町桝形商店街(京都市上京区)に現れた、『たまこまーけっと』のポスター。2013年1月19日
このブログでは、京都の出町商店街の萌えキャラ「加茂川マコト」を追ってきた。
2011年の12月に、出町商店街に現れ、商店街の店にマコトをイメージしたオリジナル商品が次々現れ、商店街を徐々にマコト色に染めていった。
さらに、京都のローカル線、叡山電鉄と組んでスタンプラリーを行ったり、マコトをイメージした女の子をオーディションで募集したり、1周年には誕生会を行ったり、関西のタウン誌・関西ウォーカーのイルミネーション特集に掲載されたりと、萌えキャラらしい活躍をせずに知名度を上げ、ファンを獲得していった珍しいキャラである。
その姿は、まさに商店街に働きかけ、少しずつ盛り上げていくストーリーを見ているかのようであった。
しかし、年が明けて2013年、その様子が変わってきたようだ。
出町桝形商店街は、京都アニメーションのアニメ『たまこまーけっと』のロケ地として選ばれた。
商店街を舞台としたアニメだけあって、その描写は細かく、場面のいたるところに、出町商店街の風景と似た背景が出てくる。
そのためか、たまこの放送直後から、舞台を訪れる人が続々現れているのだ。
商店街にはたまこのポスターが飾られ、休憩所には「たまこまーけっと 交流ノート」が置かれた。
たまこのロケ地として注目を集める中、既にいた加茂川マコトはどうなっていくのだろうか。
そして、出町商店街はどこに行くのだろうか。
それを考えてみたい。

出町商店街の各店で、加茂川マコトをイメージした商品を出したり、「マコトのおすすめ」として、売りとなる商品をPOP付きで売り出した。商店街に徐々にマコトの顔が増え、商店街の顔として定着していった。2012年9月頃
★根強い加茂川マコト人気
2013年1月中旬、『たまこまーけっと』のロケ地となった、出町商店街を訪れた。
たまこのロケ地目当てで訪れたファンが、街のあちこちをカメラで撮ったり、アニメに登場したおもちゃ屋にけん玉を買っていったりと、以前に比べ、その姿が増えていたのだ。
休憩所に置かれた「たまこまーけっと 交流ノート」には、休日には2,3ページのペースで書き込まれ、1週間で15ページにもなることから、舞台探訪者は目に見えて増えていると、出町の商店主たちも感じ取ったようだ。
お花屋さんでは「あの鳥でも置こうかしら。」という声もあり、ファンを取り込もうとする動きも出てきつつあるらしい。
流れとしては、『たまこまーけっと』でアニメファンを取り込む方向に進みつつあるのでないだろうか。

叡山電車 修学院車庫(京都市左京区)で開催された「えいでんまつり」の会場で行われた、「加茂川マコトイメージオーディション」。最終選考に選ばれた6人の候補者と、MCで加茂川マコトの声を担当する、湯浅円さん(写真左)が、マコトのキメ台詞「酢でしめたろかっ!」を叫ぶ。2012年10月27日
しかし、商店街での加茂川マコトの支持も根強い。
たまこが現れても、依然として商店街のあちこちに加茂川マコトのバナーや横断幕が張られ、店にはマコトの名前が付いた商品が並び、商店街が取り組むエコスタンプにも、マコトの顔が入っている。
むしろ、たまこよりマコトが主役といわんばかりに目立っているくらいだ。
よく、「加茂川マコトをやめて、知名度も集客力も上の『たまこまーけっと』に鞍替えするんじゃないか」と危惧する声がある。
しかし、僕にはその可能性は薄いのではないかと思う。
彗星のように現れ、じわじわと商店街の人に浸透し、たった1年で、商店街の中にも外にも支持者を増やしていったマコトが、そう簡単に商店街から姿を消す可能性は低いのではないだろうか。

加茂川マコトが登場し1年経った2012年12月1日、出町商店街で「加茂川マコト聖誕祭」が行われた。10月のオーディションで選ばれた、リアル加茂川マコトを囲んで巨大ショートケーキ(Granewtonさん提供)とくす玉で祝い、ファンたちと出町名物さば寿司で作ったケーキを食べた。
★加茂川マコトの消失
しかし、ここ1か月の加茂川マコトの動きがおかしい。
加茂川マコトを運営する二つの組織のすれ違いである。
出町商店街の萌えキャラといわれる加茂川マコトは、商店街などでの活動は出町商店街の人が行っているが、キャラクターデザインや著作権に関しては、「ことまきプロジェクト」が握っている。
ことまきプロジェクトは、アイドル事務所のタレントのように、2次元キャラを登録しており、クライアントから依頼があれば、タレントを派遣するように、キャラを貸し出すというシステムになっている。
キャラを貸し出したり、キャラをデザインしたり、キャラの新しいイラストを描いたり、キャラのグッズを発売することで、依頼者に使用料を取るという仕組みで運営されているのだ。
ここ数か月の加茂川マコトにまつわる動きがおかしい。
当初、出町商店街のイメージキャラとして運営されていたが、出町から離れローカルタレントとしてアイドル活動をする方針に変わっているようだ。
これは出町商店街が推進しているのではなく、ことまきが行っているそうだ。
まずことまきプロジェクトのホームページのキャラ紹介。
加茂川マコトの下に、なぜか「ことまき専用バージョン 加茂川マコト」というキャラが出来ていたのだ。
出町商店街のマスコットガールで、ハッピを着て「酢でしめたろかっ!」と言っていたマコトとは一転
ダンスでもやりそうな格好で、なぜか「ことまきプロジェクトのトップアイドル。」という謎の肩書きが付いている。
そう、出町の加茂川マコトと、ことまき専用の加茂川マコトと、まったく別人が現れてしまったのだ。
さらに、10月に募集した、加茂川マコトのイメージガール「リアル加茂川マコト」も、出町から離れている。
出町をPRする女の子として選ばれたはずだったが、いつの間にか「ことまきプロジェクトに所属するコスプレアイドルとして」という設定になっている。ギャラでも貰っているんだろうか。
早速2月には、リアル加茂川マコト単独の「バレンタインイベント」が行われるという。
リアマコからチョコをもらったり一緒に会話したり歌を歌ったりするイベントで、完全に単なるご当地アイドル状態である。
もちろん、会場は出町商店街ではない。
さらに、加茂川マコトのツイッターの名前が、
「加茂川マコト(公式)」→「加茂川マコト(非公式)」→「加茂川マコト(出町Ver.)」に変わった末に、アカウントが消えたということも起こった。
その際、「出町の加茂川マコトはもういなくなりました」とか「こんなんで契約続けられるわけないやろ…」という、いつものマコトとは違う悲痛な叫びを残して消えたのだ。
一応、そのときのツイッターのログが、こちらに残っている。
これは、著作権を持っていることまきに、出町側が何か言われたのだろうと推測できる。
「(公式)」にしていたらおかしいから止めろとでも言われたのだろうか。
出町は公式ではないのか。
加茂川マコトという名前や「酢でしめたろかっ!」というキメ台詞は、出町の人が考えたというのに。
その裏で、ことまきプロジェクトに"所属する"リアル加茂川マコトのアカウントは、「加茂川マコト@ことまきP」に変わっていた。
今までいた加茂川マコトは、新しく出てことまきのアイドルとなったリアル加茂川マコトに、オフィシャルの座を取られてしまったようだ。
それは、昔放送していた特撮番組『宇宙猿人ゴリ』のタイトルが
『宇宙猿人ゴリ』→『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』→『スペクトルマン』へと変わり
ゴリが主役の座から追われ、敵であったスペクトルマンに主役のポジションが移っていくのに似ている。
ツイッターのアカウント消失によって、ツイッター上でで加茂川マコトお家騒動が明らかとなり、それを受けて
2013年1月19日、「加茂川マコト契約の詳細について」というニュースリリースが、ことまきプロジェクトから出された。
※現在、「加茂川マコト契約の詳細について」に上書きする形で、「加茂川マコト契約終了のおしらせ」というニュースリリースが書かれています。ですので、上記リンクは同ページのキャッシュから回収した魚拓になります。
早い話が…
出町「出町と別のキャラとして活動するなら、出町側は関知しない」
↓
契約更新
↓
出町「ことまきに運営を任せます」
↓
出町「外で活動するとき、出町の名前を使わないで欲しい」
↓
ことまき 出町商店街の名前を使えなくなったので、マコトことまきバージョン作成
↓
ことまき「出町側からの契約更新案に同意している」
※マコトのツイッターアカウントは、ことまきの厚意により、出町の人に担当していただいた
だそうだが、それを信じるには材料が揃っていない。
そんなに都合よく「ことまきに運営を任せます」と言うだろうか。
出町の活性化のためのキャラなのに、「外で活動するとき、出町の名前を使わないで欲しい」などと言うだろうか。
もう一つの運営組織、出町商店街からの説明が出ていないのである。
一面だけから物事は見えないので、よく考えて読んでいただければと思う。
もちろん、出町商店街の側も、説明を出していただく必要はあるが。

出町商店街の休憩所に置かれた「たまこまーけっと交流ノート」。放送期間中は、1週間で15ページくらいのペースで書きこまれている。置いていったのはファンの人。2013年1月19日
★キャラで町おこしをするのはいいことなのか?
このままでは、出町商店街から加茂川マコトは消えてしまうのか?
それは今のところ不明である。
商店街では、今日も加茂川マコトがあちらこちらにいて、元気な笑顔を振りまいている。
その一方で、『たまこまーけっと』目当ての客が増え、それ関係の商品を出した方がいいのではないかという機運も高まってきているようである。
マコトは姿を消し、それに代わって、たまこが商店街を埋め尽くしていくのか…?
それとも、マコトとたまこは共存するのか…?
しかし、僕はどちらも長く続かないだろうと思っている。
まず、アニメは3か月、長くて6カ月しか続かない。
それが終わってしまってからは、旬を逃してしまうので、たまこ関係の商品を出しても、そんなに売り上げはあがらず、廃れてしまうだろう。
その間に次々と日本のどこかを舞台にしたアニメが放送され、舞台探訪者はそっちに行ってしまうのだ。そういうお客をなんとか繋ぎ止めておきたいと考えるのは、商売上得だろうか?
また、『らき☆すた』の鷲宮神社と商店街のように、商店街をたまこが埋め尽くすなどということは、あり得ないと思う。
少なくとも、加茂川マコトのように、「マコトのおすすめ」というポップが付いたオリジナル商品が各店に出るようなことはなく、浸透しすぎることはないだろう。
それに、古来から日本の首都だった京都の街中にある商店街のことだ。
田舎の場合、そこをロケ地にしたアニメが現れたら、我も我もとそれに飛びついて、街にはキャラを模したグッズがあふれ、キャラのノボリが立ち並び、アニメ一色にして、地域活性化をそれに頼っているような"聖地"を見てきた人は多いだろう。
しかし、人が多く集まり、マスコミに取り上げられやすい都会では、世間から注目されることは珍しいことではない。
ましてアニメ以外のことで注目される可能性は、比較的高いのだ。
そうした京都において、必死にアニメでPRする必然性を感じる店主たちは多くないかもしれない。
むしろ、必死さはみっともないと考えているかもしれない。
とはいえ、お客さんをおもてなしするための、ささやかなお土産は考えておられるかもしれないが。
僕は最初に加茂川マコトをとりあげる記事を書いたとき「萌えおこしだけを機軸にしてはいけない!」とタイトルを付けたことがある。
その意味は、「萌えだけに特化してしまったら、萌えブームが廃れたとき完全に倒れてしまうし、その他の商店街の魅力を殺してしまう。そうではなく、商店街振興策として、いくつかの路線を取り、萌え路線はその一つにした方がいい。萌えおこしのための萌えおこしはやらない方がいい。」というものである。
しかし、実際の出町はアニメだけの路線で動いていないのだ。
昔ながらのお店もあれば、若者向けの店もある。便利な100均やスーパーもある。
エコを掲げた取り組みもすれば、王将出町店のように変な店もある。
先進事例を勉強しに行ったり、近隣の大学生の活躍の場を提供したり、様々な顔を持っている。
加茂川マコトはそのうちの一つだったのだ。
そして、萌えおこしのための萌えおこしをやらず、地域活性化のための萌えおこしを成功へと導いていった。
アニメや萌えキャラで町おこしをするよりも、商店街のそれぞれの店が一生懸命商売をしていき、それと並行して、将来に対して考え、新しい動きをしていくことの方が大事だと思う。
幸い『たまこまーけっと』は商店街をテーマにしたアニメだ。
商店街で商売をする姿それ自体が、アニメファンにとっては魅力的に映っているはずなのだ。
そのままでいいと思う。
それに、マコトとたまこまで、商店街の新たなファンが増えてきた。
彼らが商店街とアニメを盛り上げていくという心意気を受け止めて、彼らと協力して商店街を盛り上げていく方が、うまくいくのではないかと思っている。
萌えキャラでなくても、アニメでなくてもいいと思う。
出町商店街はマコトを使って盛り立てるために、1年間大変よく頑張ってここまで愛されるキャラに育ててきたので、その頑張りをキャラではなく、別の方面であっても、商店街を盛り上げたり新たなお客さんを獲得していくことに使えるだろうと僕は信じている。
萌えがどうだアニメがどうだということよりも、商店街を、面白く、親しみやすく、魅力的で未来を感じる、そういう場に向かって欲しいと思っているのである。
★その続き:萌えおこしの"失敗"は何をもって"失敗"か-加茂川マコト終了に寄せて-
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[日記]ご当地キャラの光と影
『たまこまーけっと』と加茂川マコト、どうなる?出町商店街 −実在看板少女のさがしかた 僕には事の真相はわかりませんし、上の記事やそのリンク先を見ての意見でしかないのです
- 2013/01/24(22:19)
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